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舌診撮影

2009.09.07(22:38) 342

東洋医学の診断の中には舌診(ぜつしん)といって、ベロの色や形、その上に載った苔の様子から、身体の状態を伺うという診断法があります。

今回、勉強会の中で、この舌診の研究をする事になりました。
班の中で交替で、患者役の人をたてて、鍼を刺す前と刺した後で、どのように舌に変化がみられるのかを写真で記録してまとめてみようという事になりました。
写真で記録を残すとなると、窓から差し込む光の加減など、その時の環境の変化で微妙に舌の色合いが変わってしまうと言うことも想定して、同じ条件下で舌の撮影が可能になるようにしなくてはなりません。
そこで、思いついたのが舌診撮影用の簡易ボックスです。
撮影する際は、モデルの顔だけを箱に入れて、完全に外界からの光を遮断して撮影すれば、同じ条件に設定できるのでは、と、その箱を作るべく、ホームセンターや100円ショップなどを練り歩き、材料となるものをあれやこれやと買い集めました。
材料
なにせ、毎月の勉強会に家から持参する為、持ち運びが楽になるよう、軽くて嵩張らないものに越したことはありません。
そこで、取り外し可能ですぐ組み立てできるような骨組みを作り、後はその骨組みに布を被せるだけであれば、と色々イメージは湧くのですが、いざ制作しようとなるとこれがなかなか一筋縄ではいきません。
中でも一番難儀したのが、骨組みにかける布で、普通の布では光が漏れてしまうので、厚めのジーンズ生地を用意してそれを寸法に合わせ裁断したり、つなぎ合わせたりと、四苦八苦です。
押入の奧から小学校の時の家庭科で使っていた裁縫箱を引っ張り出して、鍼を針に持ち替えてのはり仕事ですが、同じ“はり”だというのに全然勝手が違います。
裁縫道具 制作中
もう少し、器用に出来ると思っていたのに少し甘かったようです。
裁縫している最中、本気でミシンを購入しようかと思いました。

毎回、少しずつ問題点を改良し、今回の勉強会で使用したのが、3号機になります。
撮影ボックス
当初は前面を布で囲うつもりだったのですが、この3号機に至って、黒い発布スチールを壁として三方に配置し、カメラをセットする上面と頭を入れる面に布を被せるようになりました。
まだまだ改良の余地はありますが、なんとか撮影が出来そうな感じで仕上がってきました。

今だにホームセンターに行こうものなら、気がつくとこの撮影ボックスに使えそうな材料を探している自分がいます。
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天長地久 ~長野県東御市から送る鍼灸師の日常~


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“ハイ”便のお話

2009.09.04(22:21) 341

少しビロウなお話なのですが、普段僕達は便意を催しても、それを適切にコントロールする事が可能ですよね。
もし、ウンチが心太のように抑えようもなく、次から次へと溢れてしまおうものなら、僕達は相当不便な思いをしなければならないでしょう。
それは便に限らず、おならであっても、同様に言えることかと思います。
僕達は、意識的に固形物と気体とをちゃんと選り分けて、造作もなくおならだけを器用に出すことも出来ます。
改めて考えてみると、肛門という一つしかない穴なのに、こうした仕事をキチッとこなせると言うのはすごいことなのではないのでしょうか!

このような芸当が出来るのも、肛門(特に外肛門括約筋)の神業とも言える微妙な収縮の調節により、便意を感じてもそれを肛門の手前で留めたり、また排便行為を自分の意思で自由に決定することが出来るのです。
ウンチとオナラの出し分けは、さらに緻密でウンチであれば、、外肛門筋をゆっくり大きく弛めるのに対し、オナラであればその筋肉を少しだけ弛めるにとどめ、出来た隙間から気体を逃がすというウルトラCの離れ業をやってのけているのです。

兎角マナーを問われるオナラですが、こうして考えると、人間の身体が織りなす芸術的な音と思えば、少し寛容になれるかも・・・・・って、なわけないですね。

肛門を含め、ウンチの生成、運搬、排出などの一連の行程は大腸の役割です。
東洋医学では、この働きの事を踏まえ、大腸のことを『伝導の官』と呼んでいます。
そしてこの大腸は、呼吸に関わる肺と表裏陰陽の密接な関係にあるというのが東洋医学の考え方です。
さらに東洋医学では、肛門の事を『魄門(ハクモン)』と言います。
『魄(ハク)』と言うのは、肺に宿る気のことで、肺が行っている気の循環や精神活動などの根源を為すものです。
『魄』は主に快・不快の感情、本能、反射的動作などに与しています。
現代医学では、肛門はただただ肛門でしかありませんが、肛門の事を魄門と名付けていることからも、気をつかさどる肺が肛門に大きな影響力を有しているという事を示しています。
つまり、先ほどのお話のように肛門を弛めたり引き締めたりするコントロールなどは、肺の作用が働いていることなのです。

肺の力に偏りが生じてくると、そうした魄門のコントロール作用も効かなくなり、例えば肛門の緊張が緩まず便秘になったり、残便感があったり、便が漏れやすくなったり、オナラが止まらない、オナラと一緒に粗相してしまう等の症状が起こることがあります。
また肛門付近に出来る出来物、痔に関してもこの肺の変動で起こることが多く、それらの治療に関しては肺経にあるツボに反応が出ていたり、鍼やお灸をすることで改善されるなんて事もあります。
例えば、喘息の治療で、肺経に対して行っていた治療によって、呼吸器系の調子が良くなることはもちろん、「最近はお通じの調子が良いんです」というようなお話を耳にすることもありますが、これも肺と大腸が非常に深い関わりがあるのだなぁと臨床を通じて実感することでもあります。

人間の身体ってそれぞれの器官が独立している訳ではなくて、すべてが関連して一人の人間の生理活動が成り立っているんですよね。

天長地久 ~長野県東御市から送る鍼灸師の日常~


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50周年記念円鍼

2009.09.02(21:10) 339

先々月開催された東洋はり医学会創立50周年記念大会で、参加者全員に配られた記念品。

50周年記念品

果たしてどんなものが出てくるのかと、蓋を開けるまでドキドキ、ワクワクしていました。
箱から出てきたのは、とても斬新な形をした円鍼でした。
50周年記念円鍼
鍼に馴染みがない方であれば、そもそもにして、これが鍼と呼ばれる代物だとは到底思えないかと思います。
しかし、これはこれで昔から語り継がれる九鍼の中の一つ“円鍼”という鍼になります。


『霊枢』九鍼十二原篇第一

九鍼之名、各不同形。
一曰鑱鍼、長一寸六分。
二曰員鍼、長一寸六分。
三曰鍉鍼、長三寸半。
四曰鋒鍼、長一寸六分。
五曰鍼、長四寸。
六曰員利鍼、長一寸六分。
七曰亳鍼、長三寸六分。
八曰長鍼、長七寸。
九曰大鍼、長四寸。
鑱鍼者、頭大末鋭、去写陽気。
員鍼者、鍼如卵形。揩摩分間、不得傷肌肉、以写分気。
鍉鍼者、鋒如黍粟之鋭、主按脉勿陥。以致其気。
鋒鍼者、刃三隅、以発痼疾。
鍼者、末如剣鋒、以取大膿。
員利鍼者、大如氂。且員且鋭、中身微大、以取暴気。
亳鍼者、尖如蚊虻喙、静以徐往、微以久留之而養以取痛痺。
長鍼者、鋒利身薄、可以取遠痺。
大鍼者、尖如梴、其鋒微員、以写機関之水也。

治療で用いる九鍼はそれぞれ名称と形が異なります。
1,鑱鍼(ざんしん):長さ一寸六分で、鍼の頭の部分が大きく、尖端は鋭くなっていて、
皮膚の表面にある余分な陽気を取り除くのに適しています。
2.員鍼(えんしん):長さ一寸六分で、鍼先が卵のようになっていて、これで肉の割れ目を撫でることで、肌肉を損なうことなく、肉の割れ目に滞っている気の通りを良くします。
3,鍉鍼(ていしん):鍼先が黍粟粒のような形状で丸まっており、皮膚を落ちくぼまさな
いように経脉にあてがい、気の流れを円滑に導きます。
4.鋒鍼(ほうしん):鍼先が矛のように三角錐のようになっていて、慢性的で頑固な病に
対して、この鍼を用いて刺絡をします。
5.鍼(ひしん):先端が剣先のようになっていて、でき物などに対して、これを切開し
て膿を出すのに用います。
6.員利鍼(えんりしん):大きくて馬の尻尾の毛のようで、尖端は丸い上に鋭い。鍼体(
鍼の中程)の部分は少し太めになっていて、荒々しい邪気をさばくことが出来ます。
7.亳鍼(ごうしん):尖端が蚊や虻のくちばしの様に細く、静かにゆっくりと刺し、皮膚
の浅い所で、しばらくの間留めておけば、気が補われ、痛みや痺れを取り除くことが出来ます。
8.長鍼(ちょうしん):尖端は鋭くて、鍼身は薄い形状となっています。深い所にある痺
れに対して用います。
9.大鍼(たいしん):尖端は棒状になっており、その刃先は僅かに丸まっています。関節
などに水が溜まっている所に、その水を取り除く為に用います。


古典にもあるように、その尖端の卵形の形状が忠実に再現されています。
さらに柄の方が五角形をしていて、機能的にも見た目的にも、珠玉の一品と言えます。
記念品を頂いてからこっち、治療院で日々使用しているのですが、来院されるめざとい子供達の間でも、「新しい鍼がある~!」とかなり興味を引くものになっています。

この円鍼を使って、皮膚の凹凸の激しい所などに軽く2,3回撫でるようにして滑らすと、たちまち皮膚の表面に艶が出て、そう言った凹凸が少しづつ平らになってきます。
そんな反応を一つ一つ確認しつつ、他にも色々と応用できそうで、今は自分の身体を使って、この円鍼で毎日遊んでいます。

天長地久 ~長野県東御市から送る鍼灸師の日常~


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政治家と治療家

2009.09.01(23:47) 338

日曜日は、衆院議員選挙が行われ、開票結果が報道されると共に、悲喜こもごも、様々な思いが混沌と渦巻いていましたが、結果は民主党の圧勝と言うことで、暑い、熱い、夏の選挙がようやく幕を閉じました。

しかし、数の上での圧勝とはいえ、本当の意味で民主党の真価が問われるのは、今後の政局でどのように日本という国の舵をとるかにかかっています。
国民を幸せにするか、不幸せにするか、何と言っても、それは政治の力です。
日本のこれからの行く末を、坐して見守りたいと思います。

ところで、医学書として読まれる黄帝内経にも、治療家が人を癒すに必要な心得は、施政者が国を治める事と同じであると諭している箇所があります。


『霊枢』師伝篇 第二十九

夫治民与自治、治彼与治此、治小与治大、治国与治家、未有逆而能治之也、夫惟順而已矣。順者、非独陰陽脉論気之逆順也、百姓人民皆欲順其志也。

およそ、民衆を統治し身を修めること、他人を癒し身を修めること、小さな事柄を処理したり重要な問題を解決すること、国を治めたり家庭を守ること、これらの本質はすべて同じであり、どちらか一方のみを優先し、他方をおざなりにしたところで、成就するものではありません。
ただただその基本原則を遵守しなくてはなりません。
治療にあたって、ここで言う従うべき基本原則というのは、患者の陰陽経脉の生理を頭で理解するだけでなく、今目の前にある患者の血気の状態に目を向けなくてはならない。
同様にして、政を為す者は、民衆の動態を上辺から眺めるだけでなく、市井の中にあって人々が本当に何を求めているかを知り、それに適った政策を施さなくてはならない。



国の礎は国民、一人一人です。
その国に暮らす人々を不幸に追いやってまで、国の繁栄を願おうとも、それは国を富ませたことにはなりません。
そのような暴政は、いずれ破綻を招くことになります。
過去の歴史がそれらの事実を証明していることでもあります。

生きた人の身体やその生きた人々が営む世相は時々刻々と変化していきます。
治療家や政治家に必要なのは、その変わりゆく状況(気)に柔軟に対応し、適宜求められている治療/政策を如何に与えることが出来るかという点です。

紀元前に言われていた事ですが、今なお心得ておかなければならない格言と言えますね。
僕も非常に身が引き締まる思いです。

天長地久 ~長野県東御市から送る鍼灸師の日常~


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あくびの神秘

2009.08.31(22:24) 337

電車にガタゴト揺られていると、つい眠くなって思わず欠伸をしてしまいます。
そんな時、自分の周りを見渡すと、同様に欠伸をしている人を見かける事って多くないですか?

「欠伸は伝染する。」とは、よく言いますが、人によっては、猫の欠伸までも移ってしまったなんて方もいらっしゃいます。


この欠伸、以前は脳の酸素不足が原因で、体内に不要な炭酸ガスが蓄積してくると、反射的にガス交換を強制的に促す為に行う深呼吸のようなものと考えられてきました。

しかし、最近になって、お腹の中にいる赤ちゃんも欠伸をしていたり、実験によって血中のガス濃度の変化を生じさせても欠伸は起こらないという報告もあり、この脳の酸素不足による反射の説は見直されているようです。

実際、日常これだけ頻繁に繰り広げている欠伸も、実はまだ科学的に完全に証明出来てはいないのです。


東洋医学では、そんな欠伸に対して一応の説明がなされています。

『霊枢』口問篇 第二十八

黄帝曰、人之欠者、何気使然。
岐伯答曰、衛気昼日行于陽、夜半則行于陰。陰者主夜、夜者臥。陽者主上、陰者主下。故陰気積于下、陽気未尽、陽引而上、陰引而下、陰陽相引。故数欠。陽気尽、陰気盛、則目暝。陰気尽而陽気盛、則寤矣。


黄帝が尋ねました。「人が欠伸をするのはどうしてか?」
岐伯、その問いに対して次のように回答しました。「衛気は日中は身体の表面(陽分)を巡り、夜には
身体の内側(陰分)を巡っています。陰と言うのは、夜に属しているので、陰の持つ「静」と言う性質によって、夜は眠るようになります。陽気というのは上昇する性質がある為、身体の上に向かい、陰気は下降する性質があるので、身体の下に向かいます。
その為、陰気が下に集まりつつある段階で、陽気がまだ身体の上部残っていれば、陰気の作用で更に陽気を下げようとするので、陰気と陽気が互いに引っ張り合うようになり、欠伸が出るようになります。
上にある陽気が尽きて、陰気が主体となれば、人は眠りに陥るようになります。朝になり、陰気が尽きて、陽気が盛んになってくれば、人は目を覚ますようになるのです。


要するに、欠伸の仕組みとしては、気を下に降ろそうとする力と、上げようとする力のせめぎ合いで起こると言うことになります。

この条文は、欠伸の説明をしつつも、さらに踏み込んで睡眠のメカニズムにまでも言及しています。

仮に陰気・陽気の交替がスムーズにいかない場合、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったり、寝起きが悪い等の症状が起こるようになります。

さらに、日中の陽気が盛んになっている時に、毎日身体がだるくて、ことある毎に何度も欠伸をしてしまうと言う状態も、身体を休める陰気の力が不足していて、夜の睡眠時、陰気が満足に働いていなかったと言うことを暗に示しています。

ちなみに食後、お腹が充たされると、眠気が襲ってきて、欠伸しだすようになるのも、陰分に食べ物(水穀の気)が降りて、一時的に陰の力が増すので、陰気と陽気のせめぎ合いが起こっていると考えられます。

体質的に消化能力が弱い方が、毎度の食事で暴飲暴食をすれば、食べ物を消化する事に多くの陰気を動因、消耗することになり、午後からの仕事に差し支えるくらい身体がだるくなったり、ボーっとして頭が働かなくなるなんて言うこともあります。
そのような症状に心当たりのある方は、過食の傾向があるようなら少し食事量を減らしたり、よく噛んで食事を摂るように心懸けるといいでしょう。

冒頭の欠伸は伝染すると言うことですが、実際にイギリスのスターリング大学のジェームス・アンダーソン氏の報告によると、欠伸は親しい人ほど移りやすいと言います。
これは、欠伸が無意識にその人との共感によって生じているという見方もあるそうです。

これは言い方を変えれば、気の共振現象と捉えられるかも知れませんね。
我々鍼灸師が、脉を診る時に、その脉を診ている人の脉をとると言った事を数人で数珠繋がりで見ていると、繋がっている人の脉がみんな一様に変化していく事があります。
いわば、水面に広がる波紋のように、生きている人同士、無意識にでもお互いが互いに影響しあったり、共鳴しあったりしているのでしょうね。

人の身体は、本当に神秘的で、とても興味深いものです!

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  1. 舌診撮影(09/07)
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  3. 50周年記念円鍼(09/02)
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