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あくびの神秘

2009.08.31(22:24) 337

電車にガタゴト揺られていると、つい眠くなって思わず欠伸をしてしまいます。
そんな時、自分の周りを見渡すと、同様に欠伸をしている人を見かける事って多くないですか?

「欠伸は伝染する。」とは、よく言いますが、人によっては、猫の欠伸までも移ってしまったなんて方もいらっしゃいます。


この欠伸、以前は脳の酸素不足が原因で、体内に不要な炭酸ガスが蓄積してくると、反射的にガス交換を強制的に促す為に行う深呼吸のようなものと考えられてきました。

しかし、最近になって、お腹の中にいる赤ちゃんも欠伸をしていたり、実験によって血中のガス濃度の変化を生じさせても欠伸は起こらないという報告もあり、この脳の酸素不足による反射の説は見直されているようです。

実際、日常これだけ頻繁に繰り広げている欠伸も、実はまだ科学的に完全に証明出来てはいないのです。


東洋医学では、そんな欠伸に対して一応の説明がなされています。

『霊枢』口問篇 第二十八

黄帝曰、人之欠者、何気使然。
岐伯答曰、衛気昼日行于陽、夜半則行于陰。陰者主夜、夜者臥。陽者主上、陰者主下。故陰気積于下、陽気未尽、陽引而上、陰引而下、陰陽相引。故数欠。陽気尽、陰気盛、則目暝。陰気尽而陽気盛、則寤矣。


黄帝が尋ねました。「人が欠伸をするのはどうしてか?」
岐伯、その問いに対して次のように回答しました。「衛気は日中は身体の表面(陽分)を巡り、夜には
身体の内側(陰分)を巡っています。陰と言うのは、夜に属しているので、陰の持つ「静」と言う性質によって、夜は眠るようになります。陽気というのは上昇する性質がある為、身体の上に向かい、陰気は下降する性質があるので、身体の下に向かいます。
その為、陰気が下に集まりつつある段階で、陽気がまだ身体の上部残っていれば、陰気の作用で更に陽気を下げようとするので、陰気と陽気が互いに引っ張り合うようになり、欠伸が出るようになります。
上にある陽気が尽きて、陰気が主体となれば、人は眠りに陥るようになります。朝になり、陰気が尽きて、陽気が盛んになってくれば、人は目を覚ますようになるのです。


要するに、欠伸の仕組みとしては、気を下に降ろそうとする力と、上げようとする力のせめぎ合いで起こると言うことになります。

この条文は、欠伸の説明をしつつも、さらに踏み込んで睡眠のメカニズムにまでも言及しています。

仮に陰気・陽気の交替がスムーズにいかない場合、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったり、寝起きが悪い等の症状が起こるようになります。

さらに、日中の陽気が盛んになっている時に、毎日身体がだるくて、ことある毎に何度も欠伸をしてしまうと言う状態も、身体を休める陰気の力が不足していて、夜の睡眠時、陰気が満足に働いていなかったと言うことを暗に示しています。

ちなみに食後、お腹が充たされると、眠気が襲ってきて、欠伸しだすようになるのも、陰分に食べ物(水穀の気)が降りて、一時的に陰の力が増すので、陰気と陽気のせめぎ合いが起こっていると考えられます。

体質的に消化能力が弱い方が、毎度の食事で暴飲暴食をすれば、食べ物を消化する事に多くの陰気を動因、消耗することになり、午後からの仕事に差し支えるくらい身体がだるくなったり、ボーっとして頭が働かなくなるなんて言うこともあります。
そのような症状に心当たりのある方は、過食の傾向があるようなら少し食事量を減らしたり、よく噛んで食事を摂るように心懸けるといいでしょう。

冒頭の欠伸は伝染すると言うことですが、実際にイギリスのスターリング大学のジェームス・アンダーソン氏の報告によると、欠伸は親しい人ほど移りやすいと言います。
これは、欠伸が無意識にその人との共感によって生じているという見方もあるそうです。

これは言い方を変えれば、気の共振現象と捉えられるかも知れませんね。
我々鍼灸師が、脉を診る時に、その脉を診ている人の脉をとると言った事を数人で数珠繋がりで見ていると、繋がっている人の脉がみんな一様に変化していく事があります。
いわば、水面に広がる波紋のように、生きている人同士、無意識にでもお互いが互いに影響しあったり、共鳴しあったりしているのでしょうね。

人の身体は、本当に神秘的で、とても興味深いものです!
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天長地久 ~長野県東御市から送る鍼灸師の日常~


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