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魔女の一撃(中)~腰痛~

2008.07.02(23:58) 209

前回のギックリ腰の続きになります。
我々人類は二足歩行となった時から、腰痛は人間の負うべき宿命のようなもので、僕が学ぶ東洋医学の原典と言える黄帝内経の中にも、わざわざ刺腰痛篇という項を設けてまで腰痛の病因とその治療について論じています。
この事からも有史以前から人々が腰痛に苦しんでいたことを窺い知ることが出来るかと思います。
腰は、上半身の重みと地面からの衝撃や下肢の動きを統括する要の部分であり、身体の中心をなす部分であります。
我々の治療において欠かすことの出来ない経絡の走行も、人の身体を縦に貫くもので、多くの経絡の流れが、腰をめぐることとなります。
ですので、経絡を流れる気血の過不足や、あるいはその源となる蔵府の虚実(弱りあるいは亢進・その働きを阻害するものに苛まれている)などの状態が、腰に直接反映しやすいのであります。
そこで、一口に腰痛と言っても病んだ経絡、蔵府によって、様々な症状が引き起こされる事となります。
先ほどご紹介した刺腰痛篇においても、そんな腰痛がどの蔵府経絡の病によってもたらされたかを鑑別し、それに応じた治療のやり方までをも指南しています。
一部を抜粋してみてみますと、

◆足太陽脉令人腰痛、引項脊尻背如重状。
(足の太陽膀胱経の変動によって腰痛となる場合は、背中からお尻にかけて引きつるような痛みがあり、背中に重い物を背負っているような感じである。)

◆少陽令人腰痛、如以鍼刺其皮中、循循然不可俛仰、不可以顧。
(足の少陽胆経の変動によって腰痛となる場合は、皮膚を針で刺されたような痛みがあり、ノロノロとしか動くことが出来ず、俯せや仰向けが出来ない、また左右にひねることが出来ない。)

◆陽明令人腰痛、不可以顧。顧如有見者、善悲。
(足の陽明胃経の変動によって腰痛となる場合は、左右にひねることが出来ない。もし無理にひねるような動きをすれば、痛みの為に目が眩んでしまい、悲嘆にくれるようになってしまう。)

◆足少陰令人腰痛、痛引脊内廉。
(足の少陰腎経の変動によって腰痛となる場合は、背中に響くような痛みが生ずる。)

◆厥陰之脉令人腰痛、腰中如張弓弩弦、
(足の厥陰肝経の変動によって腰痛となる場合は、腰が突っ張って弓の弦を張りつめた様な状態となってしまう。)

と言うように、腰痛という症状一つとっても、東洋医学的に診察していくと様々に分類することが出来るのです。
我々は治療前の問診や、来院された際の患者さんの様子を診ることで、どの臓腑経絡の変動によって起こったかを綿密に診察し、痛みの本丸となる原因をつきとめ、しかるべきツボに鍼やお灸を施さなければなりません。

その際、西洋医学の診断によって仮に椎間板ヘルニアという病名が付けられたとしても、東洋医学的見地で診断をした場合、診断された病名が同じだからといって、すべて同様の治療を行うとは限りません。
同じ病名でも違う経絡の変動として、異なる治療を施したり、また全く違う病名が診断されたとしても、同じ蔵府経絡の変動として捉え、治療を進めることもあります。
東洋医学の利点は、患者さんを病気・病名の型に嵌めて治療を行うのではなく、その人の今表している身体の状態、訴えている症状、本来の体質によって生じやすいトラブルをそれぞれ分析し、その時、その人に一番あった治療方法で治療を行う所にあります。
まさしく一人一人に合わせたオーダーメイドの治療と言えるかも知れません。
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天長地久 ~長野県東御市から送る鍼灸師の日常~


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