タイトル画像

感情による治療

2009.07.03(23:45) 310

某新聞の社会面の片隅に一行のみの記事があります。
それは「何の数字」と題して、毎日ある数字を持ち出して、その数に関わるトピックスを紹介している記事なのですが、僕の新聞を読む順番として、いつの頃から、真っ先にこの記事から目を通してしまいます。

ちなみに今日の数字は
25.4%
これは
20代女性がストレス解消法に「泣く」と答えた割合。上位には「寝る」「甘いものを食べる」のほか、「笑う」も。笑顔も涙も理由はさまざま。(複数回答。武田薬品工業調べ)

といったものでした。

人間、健康的な身体を維持しようと思えば、「ストレスを溜めない」、「様々なストレスを上手に発散する」と言った事は誠に大切であります。
昔から「病は気から」というように、精神的な抑鬱感や負の感情といったものを抱え続ける事は、病気の状態にすでに片足を突っ込んでいるようなものとして考えられていました。
そんなストレスの解消法は、人それぞれだとは思いますが、記事にもあるように20代の女性のストレス解消法の一つに「泣く」と答えた割合が高かったのは意外な気がします。

しかし、これも東洋医学的に考えていけば非常に的確な対処法と言えるかも知れません。
例えば、人間の感情は五臓六腑(肝・心・脾・肺・腎・胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)の内、五蔵(肝ー怒、心ー喜、脾ー思、肺ー憂悲、腎ー恐驚)に宿ると考えています。
こうしたそれぞれの五蔵に対応した感情に偏りが生じた場合、その感情を宿す蔵に歪みが生じてしまいます。
そこで、治療を行う場合は、身体に異変を生じた辺りにどういった心理状態がそこに働いていたかを聞く事がとても大切になってきます。

ちなみにこの五蔵には相剋関係と言って、片方が別の片方を抑制する、制御すると言う間柄があります。
例えば、肝は脾が増長しないように抑制をかけようとしますし、同じようにして肝は肺によって制御されるような関係にあります。
このような関係を頭に入れた上で、ストレスにより怒りやイライラの感情というのが積もり積もった時、これは肝という部分に多大な負荷がかかります。
そこで、その高ぶりすぎた肝を上手く制御するためには、肺の力で少し押さえつける必要があります。
この時に肺というのは、憂いや悲しみの感情を宿す蔵でありますから、「泣く」という行為が自然と、「怒り」の感情をなだめるように作用するわけです。
こういった東洋医学的な背景を知らない方のほうが多いかと思いますが、皆さんは自ずからこうした蔵の相剋関係を利用してストレスの軽減を図っているのですね。

さて、古代の中国にはこうした仕組みを治療に利用したが為に、とても不幸な結果を自らに招いてしまった医者がいます。

中国は春秋戦国時代の時世、斉の国に文摯(ぶんし)という名医がおりました。
ある時、宗と言う国の王様が悪性の皮膚病により病に臥せってしまい、あらゆる手を尽くしても一向に良くなりませんでした。
そこにたまたま居合わせた文摯が、この王様を診察する事になったのでした。
一通り診察を終えた文摯は、王子やお妃に対して、「病気を治す事は可能ですが、王様が全開した後にきっと私は殺されるでしょう」と言ったのです。
その理由というが、王様の病気が鬱積した感情が原因の病であった為、それとは拮抗関係にある怒りの感情を抱かせる事で気持ちを発散させる必要があるということなのです。
これを受けて、王子様達は王様が治っても絶対に殺させる事はしないと文摯を説得し、いざ治療を施す事となりました。
その治療というのが、治療の予約をドタキャンしたり、診察の際にあえて無礼な態度で接したりと、果たして文摯の思惑通り、王様は大変激怒する事となりました。
それと同時に、散々悩まされた病気はあっという間に全快してしまったのですが、そうとは知らない王様はどうにも腹の虫が治まらず、結局文摯は王子様の説得もむなしく処刑されてしまいました。

兎角、人の感情というのはなかなか自分では制御できないものですよね。
病気を治した文摯ですら、結局王様の怒りの感情を沈める事は出来なかったのですね。
相剋関係を利用した治療法として非常に効果があったと言えますが、何ともやりきれない話ですよね。
鍼灸治療なら、そんなわざわざ怒らせなくとも治療が出来るのではないか、とついつい思ってしまいます。
スポンサーサイト


天長地久 ~長野県東御市から送る鍼灸師の日常~


<<腕をまくるのはどこまで? | ホームへ | ヒゲのお話>>
コメント
コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://keijyudou.blog20.fc2.com/tb.php/310-1f4e0ca2
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)